【開業経営コラム】開業前に知るべき数字の優先順位
2025年12月11日(木)

こんにちは!大阪飲食店開業支援センターの中野です。
飲食店の開業準備というと、レシピづくりや内装、食器選びといった「創造的な準備」に意識が向きがちです。
しかし実際には、小さな個人店ほど店の生死を分けるのは「数字を正しく理解しているかどうか」です。
むしろ数字の準備ができている人のほうが、開業後に悩む時間が圧倒的に少なく、安定した「回る店」をつくれます。本コラムでは、開業前に必ず押さえておきたい数字と、その優先順位をや解説します。
➀ 最重要の数字:毎月の必要売上(損益分岐点)
最初に知るべき数字は「月いくら売れば赤字にならないのか」。これを明確にできていない状態での開業は、霧の中を走っているようなものです。
損益分岐点を導き出すためにはまず、
固定費(家賃・人件費・水道光熱・通信など)と変動費(原価)を分解することです。
ここで大事なのは変動費は率(売上に対して何割か)で捉えて、固定費は額(具体的な金額)で捉えることです。
分解さえできれば、後は以下の公式通りに計算するだけです。
損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率)
この数字がわかれば、月の売上が良いのか悪いのかを判断でき、改善すべき点も見えてきます。たとえば固定費45万円、原価率35%なら、損益分岐点はおよそ月70〜75万円。つまりこのラインを超えなければ店は赤字です。
さらに発展して考えると個人事業主の場合は自分の生活費が月々の利益と近しくなるため、自分の生活費を固定費に上乗せして計算します。
上記の例の場合、仮に30万円が生活に必要ならば、必要売上は約115万円です。
これまで多くのお客様の事業計画を見てきましたが、自分の生活費や借入資金の返済額が計画から抜けているケースが数多くあります。
料理が上手でも、この数字を知らずに開業してしまうと“思ったより稼げていない”状況が続き、精神的にも経営的にも追い込まれてしまいます。まず最初に把握すべきは“必要売上”です。
➁ 2番目に大切:1日の売上の構造(席数×回転率×客単価)
必要売上が見えたら、次は「どうやってその売上をつくるか」。
ここで使うのが、飲食店の基本式です。
客単価 × 席数 × 回転率 = 1日の売上
この式を使うと、「そもそもこの店で必要売上が現実的に達成できるか」が一目でわかります。
・10席
・回転1.2回
・客単価2,000円
なら、
2,000円 × 10席 × 1.2回=24,000円/日 → 月25日で約60万円
必要売上75万円の店なら、この条件では“どう頑張っても”数字は届きません。
つまり開業前に数字を当てはめるだけで、物件の向き不向き、席数の問題、回転の限界がすぐに見えてくるのです。
多くの失敗は「コンセプトは良いが売上の構造が成立しない」店づくりから生まれます。逆に成功する店は、数字が回る前提でコンセプトを組み立てています。
➂ 3番目の優先順位:原価率の上限設定(基本30〜35%)
次に押さえるべきは「自分の店の原価率の基準」です。
原価は料理の魅力を決める一方、利益を圧迫する要因にもなります。
一般的な目安は30〜35%。
ただし個人店はロスや仕込み量が相対的に大きくなりやすいため、35%を超えると一気に苦しくなりがちです。
食材のこだわりや盛り付けへの想いはもちろん大切ですが、“美味しいけれど儲からない”店は長く続かないという現実も知っておきたいところ。
開業前にメニューを10〜15品ほどに絞り、原価・ロス・調味料まで含めて計算しておくことが重要です。
➃ 4番目:最低限必要な“運転資金”(半年分が理想)
開業者が見落としがちなのが、開店後に店を動かすための資金=運転資金です。
理想は、
固定費の6カ月分。
オープン直後は売上が安定せず、広告費や追加仕入れも発生します。ここで資金が尽きると、立て直す前に店が止まってしまいます。実際に廃業する店の多くは、利益ではなく“資金繰り”が理由です。
「とりあえず開けて、後からなんとかする」はもっとも危険。
開業前の段階で運転資金まで確保することが、長く続く店づくりの基本です。
➄ 最後に押さえる数字:開業初期の“最低来客数”
飲食店は開業3カ月が勝負と言われます。この期間に十分な認知とリピート導線を作れなければ、その後の数字は伸び悩みます。
そこで重要なのが
“1日最低何人来れば赤字を回避できるか”
という数字。
客単価と照らし合わせれば、必要な来客数が見えるので、開店前の販促や看板づくりも迷わず戦略的に進められます。SNSが苦手でも、写真・看板・動線・口コミ導線の整備で初速は作れます。
数字は難しく聞こえますが、押さえるべきポイントは極めてシンプルです。
むしろ開業前に数字を理解しておけば、迷わない・焦らない・ブレない店づくりができます。
料理の腕やセンスだけに頼らず、数字の土台を固めることがまずは経営者に求められる使命です。
その使命をしっかり遂行することが個人店でも確実に勝てる開業の第一歩になると確信しています。
最後に、数字は自分だけで完結させるのは危険です。これでいいのかな?くらいの気持ちをもって第三者の意見を求めてみてください。そうすることによってさらに精度の高い数字が出来あがり、ひいてはみなさんの経営の成功に繋がります。
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